さわっても熱くない花火

ちょっとした驚きを食べながら生きています

テスラ モデル3は寒いとどうなってしまうのか? (雪道走行/ 氷点下で車中泊)

はいどうもyanoshiです。
無限に長文記事を書いていたのですが、いつまで経っても書き終わらないので記事を分割して出していくことにしました。

モデル3が届いてもうすぐ1年です。
yanoshi.hatenablog.jp


初めての冬がやってきました。
巷では「電気自動車は寒さに弱い!」とか「冬は使い物にならない!」などの記事を目にしますが…ホントのところはどうなんだろう?モデル3はどうなんだろう?って思いますよね???

ってことで体を張って(?)、下記のデータを収集してみました!

  • 雪道走行 (大雪の乳頭温泉、男鹿半島に旅行)
  • 氷点下で車中泊 (群馬の山奥で車中泊)

はじめに感想を簡潔に書いておきますが、思ったよりも問題は有りませんでした。
ただ結局の所、電費に関する肌感が無いとドキドキする瞬間はあるのかもしれません。要は慣れなのかも?

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雪道を走り回るぞ!

表題のとおりです。

雪国出身じゃない私にとって、雪道ドライブは日常ではなく、どちらかと言うとイベントって感じだったりします。未だに雪を見るとテンションが上ってしまうタイプなので、結構雪道ドライブが好きだったり。車のある一種の限界性能みたいなのを容易に拝めますし。
昔は調子に乗って滑ってぶつかりかけるみたいなことが…さすがにもうそんなはしゃぎ方はしませんが、やっぱり雪道ドライブはテンションが上ります。
そんなこんなで車を買ったタイミングから「冬は絶対雪道走りに行くぞ!」みたいな気持ちがありました。

モデル3のモーターの事細かな制御には、試乗のタイミングからかなり信頼感を感じていたので、「雪道でも大いに力を発揮してくれるのでは?」という期待もありました。

用意したスタッドレス

ちゃんとしたスタッドレスを買ってみたい!ってことでブリジストンVRX3を買いました。
tire.bridgestone.co.jp


235/40R19 4本を、工賃保証諸々コミコミで288,040円となりました。かなり準備が遅れて、在庫切れ寸前のタイミングでなんとか確保したというのもあり、もっと値が張ってしまうかとビクビクしていましたが、一応30万を超えずに済みました。それでもなかなか良いお値段しますよね…やっぱり19インチは高いよぉ…

余談ですが、現在モデル3のTPMSは半導体不足の影響で品薄になっているようでなかなか手に入りません。そんなこんなでホイールは買わずに交換にして装着しました。
ホイールコミコミで買うなら18インチにインチダウンしてお安く抑えられればと思っていたのですが…残念。

行程

時は12月25日。ニュースで「大雪がー」って言いはじめた年の瀬に乳頭温泉と男鹿温泉郷に行ってきました。

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道のり by TeslaFi

トータル走行距離は1,731.71km、平均温度は0.78℃と冬らしい感じです。

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メトリクス

12月25日にタイヤ交換をしたので、交換して即座に旅に出るというウケるムーブです。


ちなみに雪の具合はこんな感じでした。
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ちなみにちょっとこの旅行ではないですが、こんな凍った道も走っています。 (旅行中のスケートリンクな写真が無かった)
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撮るまでもないかな?と思っていて撮ってなかったのですが、シャーベット状の路面ももちろん走行しています。

雪道走破性について

レビューをする前に比較対象の話をします。これまで雪道を走った経験でしか比較できないので、私が過去に雪道で運転したことのある車を書いておきます。

車種 タイヤ ロケーション 所感
日産 セレナ 2代目(C24型) KUMHOの何か適当なやつ 中国山地の豪雪地帯等々 昔親が乗っていた車。
免許取り立ての頃でしたし、おっかなびっくり運転していた印象がありますし、まぁそれなりに滑りましたね。にしてもなんでKUMHOだったんだろう…
ホンダ フィット 初代 1.3AU ダンロップの中古? 日本全国 学生時代の愛車。
色々な所を走りました。そしていっぱい滑りました。FFの限界を感じましたね。あとタイヤをケチるのも良くないなって思いましたね。
三菱 デリカ D:5 不明 栃木の山奥 レンタカーで借りた子。
やはりパジェロのDNAが流れる車は最高だなって思いました。4WD最高!滑りそうになっても上手く制御してオーバーステア気味にしてくれて、クイクイ雪道を走破してくれる印象でした。
スバル インプレッサ 5代目 不明 北海道 レンタカーで借りた子。
シンメトリカルAWD!って感じの走りを見せてくれました。北海道のパウダースノーばかりだったので、そこまでコンディションは悪くなかったとは思うのですが、それでも雪は雪です。
めちゃくちゃ制御入っているフィーリングを見せながらも、滑っている感覚を与えない素直なハンドリングフィーリングでした。


上記所感では主に走行中のフィーリングを記載しましたが、共通して走り出しのタイミングでスタックしかける瞬間が何度も有りました。 特にセレナとフィットはFFということも相まって、しかけるというかはスタックした経験も何度か。


さて、気になるモデル3の感想ですが、下記のような感じです。

  • ポジティブ
    • 全くスタックする気配がない。驚くほど何事もなかったかのように、あらゆる路面で走り始めることが出来る (空転すらしない)
    • 基本的に四輪が綿密に制御されている印象。内燃機関車のようにブレーキによって制御するのではなく、トルクによって制御をしているので「今制御されている感」というのはつかみにくかったものの、「そこをちゃんと曲がれるの?すごい!」って瞬間は結構あった
  • ネガティブ
    • 気をつけていても、トルクが出すぎてしまう瞬間がちらほら。雪道はチルモードで走る方が良さそう。
    • 攻めるとアンダーステアが出る瞬間がたまにある。制御されているけど、サーッと流れるような感じ。車重がそれなりだから仕方がないのかな?

ということで基本的にはかなり好印象です。VRX3のおかげかもしれませんが、怖い瞬間はほぼ有りませんでした。
特に感動したのが、全くスタックしない点ですね。走り出しについては異次元って感じでした。面白がって結構な雪とかに突っ込んでみたりもしましたが、ガンガン掻き分けて進んでいってちょっと怖いくらいです。

ただ一方で、走行中は三菱車やスバル車の方が体験が良かった気がしています。この車重だとそれが限界なのか?それとも制御でまだまだ改善の余地があるのか?その辺りは良くわかりませんが、もっと積極的に前輪後輪のトルク配分を変えて、曲がることにも制御のコミットをしてほしいなって感じでした (今の所滑らないことに注力してそうな印象。トラクションコントロールが効いて、結果として曲がってない…みたいな感じかも?)
このあたりはアウトランダーPHEVとかで雪道を走ると比較できるのでしょうか?一回走ってみたいですねー

電費について

これもまた気になる所だと思います。良く「電気自動車は冬に弱い」と言われる理由はここにあるとは思います。
というのも周知の通り、リチウムイオン電池は氷点下だと一気に性能が下がります。iPhoneが氷点下だと電源切れたりするあの現象ですね。

ただそもそもとして、リチウムイオン電池は熱に敏感なため、モデル3ではバッテリーの温度マネージメントの機構が備わっており、その制御が常に行われています (走行中も停車中も)
2021年モデルからは謎の機構「オクトバルブ」とやらが搭載されて、熱循環用のクーラントをあっちへ回したり…こっちへ回したりして、最適な温度管理を実現しているらしいです。
xtech.nikkei.com

なにはともあれバッテリーにエアコンがついているって感じなので、常にバッテリーはまともに動作する温度に維持されているはず…という話ですね。まぁそれを維持するために電気を使っているわけですが。
そんなこんなで、モデル3は電気自動車の中では温度変化に強いと言われているわけですが、はてさてどうなのだろう?という感じです。

ちなみに寒いのは嫌いなので、室内エアコンガンガンですし、シートヒーターとかも適宜ONにしています。あと2名乗車の状態で計測しています。

高速道路走行

まず、寒さの中、高速道路を走行した26日のデータを見てみましょう。

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26日の走行ルート
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26日のメトリクス

234 Wh/kmなので、通常時の1.3倍程度の電力消費量なイメージです。
特にこの記録とかは顕著で、平均速度70km/h程度で走っていたにもかかわらず、260Wh/kmでした。

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平均温度-4.5℃の時のデータ (260Wh/km)

通常この程度の速度なら、160Wh/kmくらいでも良さそうな肌感なので、1.6倍程度の悪化っぷりです。

一般道走行

じゃぁ下道ならどうなのかということで27日のデータを見てみましょう。

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27日の走行ルート
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27日のメトリクス

229 Wh/kmなので、大して高速道路走行と差はありません。ただこの日の平均気温は-5.83℃だったらしいです。さむっ…
面白いデータがありました。こちらの記録ですが、平均速度41km/hで151Wh/kmでした。

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平均温度-4.7℃の時のデータ (151Wh/km)

この数値はたしかに良くは無いものの、通常時でも130Wh/kmが妥当かな?って感じの道だったので、1.2倍を切る程度の悪化具合で済んでいます。

考察

上記に挙げた例は両方とも、-4~-5℃程度の環境で走行したデータです。
バッテリーの出力に問題があった場合、同じ温度であれば同じ割合で電費が悪化しそうなものです。もし、バッテリー保護のために使う電力量が電費悪化の原因であるなら、速度が遅くても結構な消費量になりそうなものです。両方とも若干辻褄が合いません。

なんだか単純にリチウムイオンバッテリーが低温に弱いから電費が落ちている…というわけではなさそうな気がしてきました。

この旅は大学院時代の先輩と行ったのですが、彼は元々流体の研究をしていた人で、ドライブ中に電費悪化の原因を一緒に考察していました。
その中で、面白い仮説が出てきました。「温度低下による『空気』の流体としての粘度増加が原因なのでは?」という仮説です。盛り上がりますね。

空気の粘度が上がれば、当然空気抵抗が増えると言えます。空気抵抗は速度の二乗に比例するはずなので、速度が出ている方が顕著に空気抵抗が効いてきます。粘度が上がるとそれに掛けられる係数が増加するわけなので、まぁ確かに辻褄が合いそうな気がしますね。
www.mohno-dispenser.jp

真面目に計算はしていないですが、上記サイトに掲載の図を見る限り、-5℃の時の粘度は1500Pa・sを超えてきそうな雰囲気があります。一方で20℃の時は700Pa・s程度でしょうか?ガバガバではありますが、20℃の時と-5℃のときで比較すると、空気抵抗が倍くらいになりそうな雰囲気はありますよね。

実は先日、TeslaFi上でのLeaderboard(Longest Drives By Distance)におけるランキング1位を取りまして。その折に様々な苦労をしました。


特に、空気抵抗による電費悪化は嫌というほど体験しました。 電気自動車は物理法則に対して素直な印象があり、「スピードを出せば空気抵抗によって電費が低下する」という傾向が強く現れます。
ガソリン車の場合は、最も熱効率の良い回転数とギア比が高速域だったりするので、100km/hくらいが一番燃費が良いような車もありますが、そういった感覚とは電気自動車は違ってくると思います。


あくまでも1つの仮説ですが、面白い考察なのではないでしょうか?

以上を踏まえると、モデル3は寒さにそこまで弱いというわけではなさそうです。 ただ空気抵抗は氷点下だと急激に上がりそうな雰囲気がするので、-20℃とかの北の大地(北海道)とかだと更に電費が低下しそうではありますよね…

余談: 車内はよく冷えるらしい

何もしてなかったら車内は割とキンキンに冷えます。ガラスルーフだからなのかな?



余談: 雪が乗りまくってても遠隔で暖気させられて最高だった
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これが
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こうじゃ!

デフロスター機能で、-5℃の中、この状態にするのに3%程度(2kWh~3kWh?)のバッテリーを使いました。まぁ必要なコストって感じでしょうか。
とりあえず雪は勝手に溶けてくれるし、車の中がほかほかだし、この体験は控えめに言っても最高でしたね。

-9℃の中で車中泊するぞ!

草津近郊のそれなりに寒いところで実施してみました。ちなみに天気は晴れでした。

装備

以前紹介した車中泊セットを使いました。

車中泊セット これはまだ届いていません。が、楽しみですね。 Privacy Screen for Model 3

テスラ モデル3、買っちった/// (ロングレンジ 2021年モデル ギガ上海製のレビュー) - さわっても熱くない花火

TESMAT Mattress & Carrying Case for Model 3www.tesmat.com
Privacy Screen for Model 3www.tesmat.com


あと寝袋はちゃんと冬用のやつです。モンベルの黄色のやつです。快適温度: 0℃/使用可能温度: -5℃ なので、理論上は良い感じに過ごせそうです。
webshop.montbell.jp

実施

設定温度は20℃、後部座席も含めてエアコンONにしています。

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バッテリー残量の変化

たのしかったー!

考察

室温は4℃まで下がる瞬間があったようですが、寝袋のおかげで快適に過ごせました。 (後部席のトランク付近で計測しているので、おそらく車内の最も冷えた所の温度)
10時間20分エアコンを動作させましたが、バッテリーは-17%(走行可能距離-91km)でした。(12kWhちょい程度の消費?)
概ねエアコンをガンガン動かした時の消費電力とあんまり変わらないかもしれませんね。

仮に雪で立ち往生して一晩(12時間)過ごすことになっても、20%程度のバッテリー残量を確保しておけば快適に過ごせそうです。

この数値をどう捉えるかは人それぞれだとは思いますが、少なくともガソリン車での車中泊において「一晩中エンジンをつけっぱなしにする」ってのはなかなか気が引けますし、こういった使い方が出来るのは良いですよね。

所感

とりあえず、そこまで悪いものではなかったと思います。モデル3は氷点下でもそれなりに使えると思います。

しかし、電費低下の原因が仮説の通りだった場合、北海道だとかなり厳しい電費低下に悩まされる気がしました。やはり試される大地では内燃機関の方が良さそうな気はしますね…
ただ、遠隔で車を温めておけるアドバンテージはでかい気はしています。まぁ、氷点下20℃の世界で、コンプレッサーによるエアコンが果たしてどの程度動くのかは謎ですが…

「雪道での立ち往生でのEVはー」みたいな話を議論するのは今回の主題ではないので割愛しますが、そこまで目くじら立てるほど待機電力(エアコンの消費電力)も悪くなかったかな?という個人的所感を持っています。
しかしながら、もう少しバッテリーが大きかったら「もう全く心配ありません!」って言えるのですが、モデル3ロングレンジのバッテリー容量的に、絶妙な結果であることは事実です。
この結果を見る限り、立ち往生の心配の有りそうな道においては、常に30%以上のバッテリー残量を抱えて走行したほうが無難ではありそうですよねー

余談: モデル3の室内温度センサーはイケてないかも

ディスプレイの下にあるのですが、ディスプレイの熱とかを拾って正しい温度を計測できていないのでは?という瞬間が度々ありました。
(体感温度的には寒いのに、室内温度は高いことになっている…的な)

夏はあの位置で良いんだろうけど、冬はもう少し…そもそも色々な場所に温度センサーが設置されているわけではないのだろうか?
色々と疑問はありますが、あんまり考察できていないので余談としました。

余談: TeslaFiで記録保持者になったらITmediaデビューしてた

人生何があるかわかりません。

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「後段は、1回の満充電で776kmを走破したロングドライブ記録保持者の体験談を紹介します。」
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「13時間以上尿意を我慢し電費との戦い」ウケる

www.itmedia.co.jp

しばらく会社で「おしっこ我慢してた人!」と煽られたのは内緒ですw

余談: 旅も最高でした!

乳頭温泉郷 鶴の湯温泉に泊まれたことが本当に最高でした!
www.tsurunoyu.com

男鹿温泉郷の元湯 雄山閣もめちゃくちゃエモかったですね。
yuuzankaku.co.jp

良い年末でした。

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『自分より雪できゃっきゃしている人を見ると、はしゃげなくなるよねw』って図w